
【事件の概要】
昭和53年7月末日をもって退職金支給規定を廃止し、同日までの勤続期間に対応する退職金は支払うが、8月1日以降の勤続期間は退職金算定基礎期間に算入しないこととしたもので、昭和54年10月に退職した労働者が廃止後の勤続期間も退職金算定基礎期間に含めるべきであると主張した事件である。
1、2審とも、合理性なしとして原告の請求を認め、最高裁も、次にように述べて、退職金規定の一方的廃止は合理性がなく従業員に対し効力を生じないとした。
【判決要旨】
原審の認定するところによれば、上告人は昭和41年1月1日から本件退職金支給規定を施行し、それには「退職金は、退職時の基本給月額に勤続年数を乗じて得た金額とする。勤続年数は入社の日から起算し、退職又は死亡の日までとし、1年未満の端数はこれを日割りとする」と定められていたところ、上告人は、従業員の同意を得ないまま、昭和53年7月29日の社内告示により、本件退職金支給規定を同月31日限りで廃止し、同日までの就労期間に対応する退職金は支払うが、同年8月1日以降の就労期間は退職金算定の基礎となる勤続年数に算入しないことに変更し、上告人に昭和38年6月1日入社し昭和54年10月20日退社した被上告人に対し、昭和53年7月31日までの就労期間に対応する退職金のみを支払った、というのである。そして、原審は、本件退職金支給規定は就業規則としての性格を有しており、右の変更は従業員に対し同年8月1日以降の就労期間が退職金算定の基礎となる勤続年数に算入されなくなるという不利益を一方的に課するものであるにもかかわらず、上告人はその代償となる労働条件を何ら提供しておらず、また、右不利益を是認させるような特別の事情も認められないので、右の変更は合理的なものということができないから、被上告人に対し効力を生じない、と判断した。以上の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。